【書評】運を支配する(1)

この本の背景

サイバーエージェントの藤田社長を知っている人は多いと思いますが、桜井章一を知っている人はそれに比べると、まだまだ少ないと思います。でも麻雀や勝負の世界において、知らない人はいないほどの有名人です。桜井会長は現役時代において麻雀で20年間無敗を誇っており、麻雀プロで彼を知る人の中には「桜井会長は超能力者ですから」と言う人もいるほどです。麻雀プロをはじめ、麻雀を真剣にやったことのある方の多くは雀鬼会の道場に行ったことがあるはずです。

私がこの本に興味を惹かれたのは、藤田社長と桜井会長(桜井章一は雀鬼会で会長と呼ばれている)の間にある20年という月日を経た物語に興味があったからです。20年前、藤田社長は雀鬼会の道場に通う麻雀が強くなりたい、どこにでもいるわけではないけど、それなりにいる麻雀好きのいち学生でした。彼は社会人になってからは麻雀から距離を置き、そしビジネスで大成功を収めました。ところが2014年に、突然、麻雀の最強位戦に出てタイトルホルダーとなります。そして麻雀の縁を通じて今回の共著を出すにいたりました。それについて桜井会長はこのように述べておられます。
世間で価値あるものを捨てていった私と、反対にたくさんのものを拾い集めている藤田君とでは住んでいる世界が違うと思っていた。
だが、見えない不思議な縁がどこかにあったのだろう。 
また桜井会長はこうも述べています。
本書の白眉は、藤田君が丁寧に思考を重ね、ときに身を捩るようにしながら、私の語る運やツキの話を仕事上の事柄に翻訳している部分があると思う。その意味では、この本の8割は藤田君の力でできたようなものだ。

20年という月日を経て、人間力・麻雀力において成長した藤田社長が、どのように桜井会長の言葉を理解し、そして解釈したのかという物語だと考えるとより面白いかと思います。


負けの99%は自滅

桜井会長
わざわざ自ら負けようと思う人はいないのに、なぜ自滅してしまうのか。それは「勝ち」を求める思考や行動のあり方にすでに自滅の要素が含まれているから、としかいいようがない。「勝ち」に囚われるあまり、おそろかになってしまうものがどれほどあることか。
藤田社長
仕事のレースで脱落していく人を順番にあげると、①忍耐力のない人、②目標設定の低い人、③固定観念が強くて変化できない人、になると僕は思っています。
目標設定が低い人は、高い目標を掲げている人には勝ちようがないし、忍耐力が低いと、自分の力を超えて無理なことをし始めて自滅する。こうして言葉にすると当たり前のことですが、なるほどなと思います。私自身も社会人になって10年以上は経ちますが、目標設定が低い人とは随分と差がついたなと感じています。また、私自身の忍耐力が足りずに失敗したことも多々あり、そうした場合は確かに自ら自滅したことがほとんどでした。今後はそういったことの無いようにしたいです。


運の量は無限である

桜井会長
運は無限かもしれないが、それに恵まれるには正しい選択の積み重ねが必要だし、それに相応しい苦労や努力といったものが伴うということだ。
藤田社長
しかし成長とはわらしべ長者のようなもので、二乗作用が働くものです。はじめの頃は小さい勝負のステージしか与えられませんが、勝者にはより大きな勝負のステージが次々と用意されます。そこで毎回「正しい選択」と「努力」を続けているAさんは倍々ゲームのように伸びていき、気がつくと途方もないところに行っている。
私は一介の技術屋ですが、これはよく実感します。システムの仕事には大別すると二種類あって、新規開発と保守作業があります。新規開発を成功させると、評価も技術力も高まりますが、保守作業だけでは技術力はあまり向上しません。新規開発をする機会をどれだけ求めていくかが、技術者として成長していく上で一番大事なことになります。5年ぐらいのスパンで見た場合に、年収でいうと1.5倍以上の差はつくと思います。


悪手で勝つ誘惑を断てるか

桜井会長
悪い手を使って成果を手にした人は、「勝ったのだから」「これだけの成果を得たんだから」といって、悪手を間違った手と思えなくなる。悪い手にもかかわらず、いい手だと誤解してしまうのだ。
間違った流れが現れても、慌てて手を変える必要はない。その流れがしばらく続きそうでも、我慢して正しい姿勢を貫くのだ。そうすれば、やがて正しい流れは必ずくる。それが運を落とさない技術なのだ。
藤田社長
とくに周りのみんなが騒ぎ出して「これはチャンスだ」と思わせる流れは、冷静に一歩引いて見極めたほうがいいことが多いです。
これはソーシャルゲーム業界を見ていると納得しました。2011年頃からソーシャルゲームが流行り始め、多くの企業がそれに参加しました。しかし利益を上げた企業は、ほんのごく一部ですし、当時、莫大な利益を上げていた企業ですら、今は苦しんでいます。ソーシャルゲームは悪手だったのかもしれません。収益源を失った多くのソーシャルゲームの会社は苦しみながら、方向転換を迫られています。


こういった形式で、桜井会長の抽象的で難解な言葉を藤田社長が例をふまえて、簡単な言葉で説明していきます。小手先でどうこうという話では決してなく、本質的な話をされているので、是非、皆さんも手にとって読んでみて下さい。続きは次回のブログに書きたいと思います。

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